| 1 | 二日目の夜、わたしは夢を見た。見よ、一羽の鷲が海から昇って来た。その鷲には羽の生えた翼が十二と頭が三つあった。 | 
| 2 | わたしが見ていると、見よ、鷲は翼を全地の上に広げた。そして天の風はすべて、鷲に向かって吹き、雲が鷲の周りに集まった。 | 
| 3 | 更に見ていると、羽の間から逆毛の羽が生えて来たが、それらは小さくて貧弱な羽となった。 | 
| 4 | 鷲の頭はいずれも不動のままであった。真ん中の頭は他の頭より大きかったが、それも他の頭と一緒にじっと動かなかった。 | 
| 5 | 更に見ていると、見よ、鷲はその羽を使って飛び、地とそこに住む人々を支配した。 | 
| 6 | わたしは、天の下のものすべてが、鷲に従っている有様を見た。だれも、地上にある被造物のうち一つとしてこれに逆らうものがなかった。 | 
| 7 | 更に見ていると、見よ、鷲はつめをたてて立ち上がり、羽に向かって声を発して言った。 | 
| 8 | 「皆が同時に見張りをするな。めいめいが自分のところで眠り、順に見張りをするがよい。 | 
| 9 | 頭は最後に用立てる」と。 | 
| 10 | 見よ、その声が出ているのは頭からではなく、体の真ん中からであった。 | 
| 11 | わたしは逆毛の羽を数えたが、それは八つあった。 | 
| 12 | 更に見ていると、右側から一つの羽が起き上がり、全地を支配した。 | 
| 13 | その羽は支配していたけれども、終わりが来て消えうせ、その在りかすら見えなくなった。そして次の羽が起き上がって支配し、その時代は長く続いた。 | 
| 14 | しかしこの羽も支配しているうちに終わりが来て、前の羽と同様に姿を消そうとしていた。 | 
| 15 | すると、見よ、声が聞こえてきて、その羽に言った。 | 
| 16 | 「長い間地を支配していた羽よ、聞くがよい。お前が消えうせる前に、言っておくことがある。 | 
| 17 | お前の後だれも、お前ほど長い間、いや、その半分すらも支配する者はいないだろう。」 | 
| 18 | そして三番目の羽が起き上がり、前の二つの羽のように主権を握ったが、これも消えうせた。 | 
| 19 | このように、すべての翼は代わる代わる主権を行使していったが、再び現れることは決してなかった。 | 
| 20 | 更に見ていると、見よ、時が来て、次の羽が自分たちも主権を握ろうとして右側から起き上がった。これらの中には、支配したものもあったが、すぐに消えうせた。 | 
| 21 | またあるものは起き上がったが、主権を握るに至らなかった。 | 
| 22 | この後更に見ていると、見よ、十二の羽と二つの小さな羽が消えうせた。 | 
| 23 | そして、鷲の体には、じっとしている三つの頭と六つの小さな羽以外には、何も残らなかった。 | 
| 24 | 更に見ていると、六つの小さな羽から二つが離れて、右側の頭の下にとどまった。四つの小さな羽はそのまま元の場所にとどまっていた。 | 
| 25 | 見ていると、見よ、この四つの下の羽は立ち上がって主権を握ろうと企てていた。 | 
| 26 | 更に見ていると、その一つが立ち上がった。しかし、すぐ消えうせた。 | 
| 27 | それから第二のものが立ち上がったが、これは、第一のものより早く消えうせた。 | 
| 28 | 更に見ていると、残った二つの羽は、自分たちも支配しようと企てていた。 | 
| 29 | 彼らがこのようなことを考えていたとき、見よ、じっとしていた頭のうちの一つで、真ん中のものが目を覚ました。これは他の二つよりも大きかった。 | 
| 30 | 見ていると、この頭は、他の二つを味方に引き入れた。 | 
| 31 | この頭は、味方にした他の頭と一緒に振り向き、支配しようと企てていた下の二つの羽を食べてしまった。 | 
| 32 | この頭は全地を制圧し、地に住む人々を支配して大いに苦しめた。そして、それまでのどの翼よりも大きな権力を全世界に振るった。 | 
| 33 | この後、更に見ていると、真ん中の頭が、翼のときと同じように、突然消えうせた。 | 
| 34 | さて、二つの頭が残った。この二つの頭も同様に、地とそこに住む人々を、支配した。 | 
| 35 | 更に見ていると、見よ、右側の頭が左側の頭を食べてしまった。 | 
| 36 | わたしに話しかける声が聞こえてきた。「目の前をよく見て、見えるものについて考えなさい」と。 | 
| 37 | わたしは見た。すると、森から獅子のようなものがほえながら起き上がって出て来た。そして、それが鷲に向かって人の声を発して言うのが聞こえた。 | 
| 38 | 「聞け、お前に言うことがある。いと高き方はお前にこう言われる。 | 
| 39 | 『お前は、わたしが世を支配させ、わたしの時の終わりを来させるために造った四つの獣の生き残りではないか』と。 | 
| 40 | お前は四番目にやって来て、それまでの獣をすべて征服し、権力を振るって世を大いに震え上がらせ、全世界をひどく苦しめ、またこれほど長い間、世に住み着いて欺いた。 | 
| 41 | お前は地を裁いたが、真理によってではなかった。 | 
| 42 | お前は柔和な人を苦しめ、黙している人を傷つけ、真実を語る人を憎み、うそつきを愛し、栄える者の住居を壊し、お前に何の害も及ぼさなかった人の城壁を打ち倒した。 | 
| 43 | お前の非道はいと高き方に、お前の傲慢は力ある者に達した。 | 
| 44 | そこでいと高き方は、御自分の定めた時を顧みられた。すると、時は終わり、世は完了していた。 | 
| 45 | それゆえ、鷲よ、お前は消えうせるのだ。お前の恐ろしい翼も、最も邪悪な小さな羽も、悪意に満ちたお前の頭も、最も邪悪なつめも、むなしいお前の体全体も消えうせるのだ。 | 
| 46 | そうすれば、全地は、お前の暴力から解放されて力を取り戻し、地を造られた方の裁きと憐れみを待ち望むことができるであろう。」 | 
