1 |
天使は答えて言った。「自分でよく推し量ってみなさい。わたしがあらかじめ語ったしるしが幾らかでも起こるのを見たならば、
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2 |
そのときこそ、いと高き方が自ら造られた世を訪れる時であると悟りなさい。
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3 |
この世に地震、人々の騒乱、諸国民のはかりごと、指導者たちの不安定、君主たちの動揺などが現れてきたら、
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4 |
そのとき、これこそいと高き方が前々から、初めのときから言われてきたことであると悟りなさい。
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5 |
この世の出来事はすべて、始まりは終わりによって明らかになり、終わりがすべてを明らかにするが、
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6 |
いと高き方の時もこれと同じであって、その始まりは前兆と力ある業において明らかにされ、終わりは行いとしるしにおいて明らかになる。
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7 |
そのときには、救われた者、自分の業または誠実な信仰によって怒りから逃れることのできた者は皆、
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8 |
わたしがあらかじめ語った危険を免れて生き残り、永遠の昔から聖別しておいたわたしの地と領域で救いを見るだろう。
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9 |
そのときわたしの道を悪用した者は驚き、わたしの道をさげすんで捨てた者は、懲らしめの中にとどまるだろう。
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10 |
生きていたとき、わたしの恩恵を受けていながら、わたしを認めなかった者、
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11 |
まだ自由を持っていながら、律法をさげすんだ者、
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12 |
悔い改めの余地がまだあったにもかかわらず、悟ろうとせずに軽んじた者はすべて、死後、懲らしめを受けながらそれを認めねばならないのである。
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13 |
あなたは、不敬虔な人々がどのように懲らしめを受けるかということに好奇心を起こしたりせず、むしろ義人がどのように救われるのか、来るべき世はだれのもので、だれのためか、それはいつ来るのかを尋ねなさい。」
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14 |
わたしは言った。
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15 |
「わたしが前に申し上げたことですが、今また申し上げ、今後も言い続けます。滅びる者の方が、救われる者よりも多いのです。
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16 |
それは、流れる水が滴よりも多いのと同じです。」天使は答えた。
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17 |
「種は畑しだい、色は花しだい、出来ぐあいは仕事しだい、脱穀は農夫しだいである。この世には時があり、
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18 |
わたしが、この世のまだ造られぬ前、今生きている人たちのために準備をしていたときには、だれもわたしに逆らわなかった。
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19 |
そのときは、だれもいなかったからである。しかし、この世界に人間が造られたとき、そこには不足することのない食卓と究め難い法則とが備えられていたのに、彼らの生活は堕落した。
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20 |
わたしはわたしの世に思いを向けてみた。するとどうだろう、それは滅びていた。わたしの世界に思いを向けてみた。しかし、そこに生まれて来た者たちのはかりごとのために、それは危険にさらされていた。
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21 |
わたしはそれを見て、ある人たちをかろうじて救った。わたしはぶどうの房から一粒の実を、大きな森から一本の木を救ったのである。
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22 |
だから、理由もなく生まれてきた多くの人々は滅びるがよい。わたしの一粒のぶどうの実とわたしの一本の木が救われればよいのだ。わたしが大変な苦労をしてこれを完成させたのであるから。
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23 |
あなたは更に七日間待ち、その間は断食をしないで、
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24 |
家が建てられたことのない花咲く野原に行き、野の花だけを食べなさい。肉を食べず、ぶどう酒も飲まず、ただ花だけを食べなさい。
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25 |
そして絶えずいと高き方に祈りなさい。そうすれば、わたしは来て、あなたと語ろう。」
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26 |
わたしは天使が言ったように、アルダトと呼ばれる野原に行き、そこで花の中に座り、野原の草を食べた。わたしは満腹するまで食べた。
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27 |
七日の後、草の上に横になっていたとき、わたしの心が前と同じように再び乱れてきた。
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28 |
わたしは口を開き、いと高き方の御前に語り始めた。
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29 |
「ああ主よ、あなたは、わたしたちの中で、わたしたちの祖先に御自身を現されました。それは、わたしたちの祖先がエジプトから出て、人が足を踏み入れない不毛の荒れ野を進んでいたときのことでした。あなたはこう言われたのです。
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30 |
『イスラエルよ、聞け。ヤコブの子孫よ、わたしの言葉に耳を傾けなさい。
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31 |
見よ、わたしはあなたたちの中に、わたしの律法を蒔く。それはあなたたちの中で実を結び、それによってあなたたちは、永久にたたえられるだろう。』
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32 |
しかしわたしたちの祖先は、律法を受けながらもそれを守らず、掟を守りませんでした。ところが、律法の実は滅びませんでした。滅びるはずがありませんでした。それは、あなたの律法だったからです。
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33 |
律法を受けた人々の方は、滅びました。自分の中に蒔かれたものを守らなかったからです。
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34 |
世のきまりでは、大地が種を受けるとき、あるいは海が舟を、器が食べ物や飲み物を受けるとき、
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35 |
蒔かれたもの、浮かべられたもの、器に入ったものがなくなっても、器はそのまま残ります。しかしわたしたちの場合はそうではありませんでした。
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36 |
律法を受けたわたしたちの方が、罪を犯しているので滅び、律法を受けたわたしたちの心の方が滅びるのです。
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37 |
律法は滅びることなく、その栄光を保ち続けるのです。」
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38 |
心の中でこう言って、目を上げると、右手の方に一人の女が見えた。この女は悲しんで大声で泣いており、深く心を痛めていた。その衣は引き裂かれ、頭に灰をかぶっていた。
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39 |
わたしは思い巡らすのをやめて、彼女に向かって言った。
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40 |
「なぜ泣いているのか。何に心を悩ませているのか。」女は言った。
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「主よ、私に構わないでください。泣かせてください。悲しくてしかたがないのです。私の心はひどく痛み、私はひどく卑しめられました。」
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42 |
わたしは言った。「何をされたのか。言ってみなさい。」そこで女はわたしに言った。
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「あなたのはしため、私は、うまずめで三十年の間、夫と暮らしましたが子どもが生まれませんでした。
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私はこの三十年間、毎日、毎時間、夜も昼もいと高き方にお願いしておりました。
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三十年の後、神はあなたのはしため、私の願いを聞き入れられ、私の惨めな様を御覧になり、私の苦しみに心を留めてくださり、男の子を授けてくださいました。私も夫も町の人たちも皆、この子のことをとても喜び、私たちは、力ある方を大いにほめたたえました。
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46 |
私はこの子を大変苦労して育てました。
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この子が成長したとき、私は息子のために嫁を迎えに行き、婚礼の日取りも決めました。
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