1 | 天使は言った。「いと高き方はこの世を多くの人のために造られた。しかし、来るべき世は、わずかな人のために造られている。 |
2 | エズラよ、たとえを話そう。あなたが大地に尋ねると、大地は答えるだろう。『器を造る粘土は多くできるが、金を産み出す土はわずかしかできない』と。この世の有様もそうである。 |
3 | 確かに造られた者は多いが、救われる者は少ない。」 |
4 | わたしは言った。「わたしの魂よ、知識を飲み、知ったことをむさぼり食え。 |
5 | お前は欲せずしてこの世に生まれ、望まずに世を去る。お前は、ごくわずかの間しか生きられないのだ。 |
6 | ああ、わたしたちの上におられる主よ、僕が御前で祈ることを許していただけますなら、どうか、わたしたちに心の種を与え、そしてわたしたちの知性を耕して実を結ばせてください。そうすれば、朽ちるべきすべての者が人としての場を得て、生きることができるでしょう。 |
7 | あなたは唯一の方であり、わたしたちは、あなたが語られたとおり御手によって造られたものの一つです。 |
8 | あなたは今、母胎の中に体を形づくってこれに命を与え、器官を与えられると、この被造物は火と水の中で守られます。そしてあなたが造られた母胎は、あなたがその中に造られた子を、九か月間宿します。 |
9 | そして守るものも、守られるものも、共にあなたの守りによって守られます。母胎が、自分の中に育ったものを外に返す時には、 |
10 | 器官そのものから、すなわち、乳房からその実である乳を与えるようにと、あなたは命じられたのです。 |
11 | 形づくられた子は、それによって一定の期間育てられます。その後あなたは、その子に憐れみをかけ、 |
12 | あなたの正しさではぐくみ、あなたの律法で教育し、あなたの知恵で戒められました。 |
13 | それをあなたは、御自分が造られたものであるがゆえに死なせたり、御自分の作品であるがゆえに生かしたりされるのです。 |
14 | あなたの命令に従い、これほどの苦労によって形づくられたものを、簡単なひと言で滅ぼされるなら、何のためにそれをお造りになったのでしょうか。」 |
15 | 「今こそ、申し上げます。人類一般のことをあなたはよくご存じです。しかし、わたしはあなたの民のことで心を痛め、 |
16 | あなたの世継ぎのことで泣き、イスラエルのことで悲しい思いをし、ヤコブの子孫のことで心を乱しているのです。 |
17 | ですから、わたしは、自分のため、また彼らのために御前に祈りましょう。わたしは地上に住むわたしたちの堕落を見、 |
18 | また、来るべき裁きが速やかにやって来ると聞いているからです。 |
19 | どうか、わたしの声に耳を傾け、わたしの言葉を理解してください。わたしは御前で語ります。」 |
20 |
天に上げられる前のエズラの祈りの初め。 彼は言った。「永遠に生きられる主よ、あなたの目は天の高みにあり、 |
21 | あなたの玉座は比類なく、栄光は計り知れません。天使の軍団はおののきつつあなたに仕え、 |
22 | 御命令に従って、風にでも火にでも変わります。御言葉は真実で、語られたことが変えられることはありません。 |
23 | あなたの命令は力があり、あなたの定めは恐るべきものです。あなたが見据えると深淵は乾き、あなたが怒られると山々は熔け、あなたの真理は証しされます。 |
24 | 主よ、この僕の祈りを聞き入れてください。あなたがお造りになった者の祈りに耳を傾け、わたしの言葉に御心を向けてください。 |
25 | わたしは生きるかぎりあなたに語り、わたしに分かるかぎりお答えします。 |
26 | 御民のとがに目を向けず、真実をもってあなたに仕えている人々を御覧ください。 |
27 | 不敬虔な業を行う者のたくらみではなく、苦しみながらもあなたの契約を守った人々に注意を向けてください。 |
28 | あなたの御前で、道を踏み外した者のことを思わず、畏れることを心から認めた人々のことを思い出してください。 |
29 | 家畜のような生き方をした者を滅ぼそうとはなさらずに、律法を立派に教えた人々を顧みてください。 |
30 | 獣にも劣ると見なされた者のことをお怒りにならず、常にあなたの栄光に信頼した人々を慈しんでください。 |
31 | わたしたちもわたしたちの父祖たちも死をもたらす生き方をしてきましたが、あなたは、罪人であるわたしたちのゆえに憐れみ深い方と呼ばれるのです。 |
32 | もし、あなたがわたしたちを憐れむことを望まれるのでしたら、正しい業を行わないわたしたちを憐れんでこそ、あなたは憐れみ深い方と呼ばれるでしょう。 |
33 | 正しい人たちは、あなたのもとにたくさんの業を蓄えており、自分たちの業のゆえに報いを受けるからです。 |
34 | 人とはいったい何ものですか。なぜ、あなたは怒られるのですか。朽ちるべきものゆえに、あなたはこれを厳しくあしらわれるのですか。 |
35 | 実際には、生まれてきた人の中で不敬虔なふるまいをしなかった者は一人もいません。信仰を告白する人の中にさえ、罪を犯さなかった人はいません。 |
36 | 主よ、よい業を蓄えていない人々をあなたが憐れまれてこそ、あなたの正しさと善良さとが、宣べ伝えられるでしょう。」 |
37 | 天使は言った。「あなたの言ったことはある程度正しい。あなたの言葉どおりになるだろう。 |
38 | 確かに、罪を犯した者たちについて、彼らを創造したことも、その死も裁きも滅びも気にしないことにしよう。 |
39 | むしろわたしは、義人について、彼らを創造したことと彼らの人生の旅と救いと、彼らが報いを受けることとを喜ぼう。 |
40 | それゆえわたしが語ったとおりになる。 |
41 | 農夫が地に多くの種を蒔き、多くの苗を植えるが、時が来ても、蒔かれたものがすべて無事に芽を出すわけでなく、植えられたものがすべて根づくわけでもない。それと同じく、この世に蒔かれた人々がすべて救われるわけではない。」 |
42 | わたしは言った。「もし許していただけるなら、申し上げたいことがあります。 |
43 | 農夫の種は、もし適当なときに雨が降らず芽を出さなかったとき、また、雨が多すぎて腐ってしまったとき、 |
44 | 死んでしまいます。しかし人はあなたの手によって造られ、あなたの似姿ゆえに特に名付けられ、すべてのものは人のために造られたのです。それにもかかわらずあなたは、人を農夫の種と同じに扱われたのです。 |
45 | わたしたちではなく、あなたの民を惜しみ、あなたの世継ぎの民を憐れんでください。あなたは御自分の造られたものを憐れまれるからです。」 |
46 | 天使は答えた。「今在るものは、今いる人たちのためであり、将来のものは、将来の人たちのためにある。 |
47 | わたしにまさってわたしの被造物を愛することなど、あなたには到底できない。ところであなたはしばしば自分を不正な人々の仲間扱いするが、そんなことをしてはならない。 |
48 | もっともこの点でも、あなたはいと高き方の前で褒められるだろう。 |
49 | あなたは自分にふさわしくへりくだって、自分を正しい人々の中に数えなかったからである。このことで、あなたはもっと栄光を受けるだろう。 |
50 | この世に住む人々は、おごり高ぶって歩んでいたので、終わりの時には、多くの悲惨な目に遭うであろう。 |
51 | しかしあなたは自分のことをよく考え、自分と同じような人々の受ける栄光について思い巡らしなさい。 |
52 | あなたたちには楽園が開かれており、生命の木が植えられ、来るべき時が備えられて、豊かな富が用意されており、都が建てられ、安らぎが保障されており、恵みが全きものとなり、完全な知恵が与えられる。 |
53 | 悪の根は、あなたたちに近づかないように封じられ、病は消え去り、死は姿を隠し、地獄は遠ざかり、腐敗は忘れ去られる。 |
54 | 悲しみは過ぎ去って、最後に不滅の宝が示される。 |
55 | それゆえ、滅びる者が多いことについて尋ねるのは、もうやめなさい。 |
56 | 彼らは自由を与えられていながら、いと高き方を侮り、律法を軽蔑し、その道を捨てたのである。 |
57 | その上、彼らは義人を踏みにじった。 |
58 | そして心の中で、神はいないと言った。こんなことをすれば死ぬと知っていながらである。 |
59 | 前もって話しておいたことがあなたたちを待ち受けているように、彼らには、用意された渇きと懲らしめが待ち構えている。いと高き方が人の滅びを望まれたのではなく、 |
60 | 造られた人々自らが、自分たちをお造りになった方の名を汚し、今の命を与えてくださった方の恩を忘れたのである。 |
61 | それゆえ、わたしの裁きは間近い。 |
62 | わたしはこのことをすべての人に示すのではなく、あなたとあなたと同じようなわずかの人々にだけ示したのである。」わたしは答えた。 |
63 | 「主よ、確かに今、あなたは終わりの時になさろうとする多くのしるしを示してくださいました。でもそれがいつかということは示してくださいませんでした。」 |