この「ぶどう園の労働者のたとえ」をベースにした聖クリソストモス(金の口)の復活祭説教は正教会の復活祭の聖体礼儀で毎年朗読される、喜びに満ち溢れる説教です。
復活祭の説教[1]
さあ、心から神を愛する人々よ
この美しく光り輝く祭を楽しもう
さあ、賢いしもべたちよ
それぞれの喜びを胸にたずさえ、主ご自身の歓喜と一つになろう
長い斎(ものいみ)をしっかり守った者は
さあ銀一枚(一デナリ)を受け取りなさい
(あなたが長い大斎の最初から、そう、あのぶどう園の労働者たちのように)
第一時から働いたなら、今日、胸を張って当然の報酬を受け取りなさい
第三時を過ぎてから来たのなら、感謝して(その報酬を)喜びなさい
第六時をまわってから来たのでも、何の心配もいらない
同じだけ受け取れるのだから
第九時になってようやく来たとしても
何をとまどっている…、さあ、この食卓につきなさい
とうとう第十一時になるまで重い腰を上げなかったあなたも
遅れたからといって、何も怖がることはない
そうなのだ、この宴会の主人は実に寛大だ
最後の者も最初の者と同じように迎えてくれる
第十一時に来た者も、第一時から働いた者と同じように憩わせてくれる
後から来た者も憐み、最初から来た者も忘れはしない
彼にも与え、これにも賜われる
行いも受け入れてくれ、志も祝福して下さる
功績(てがら)も認めてくれ、望みも励まして下さる
さあ、だから、この主ご自身の歓喜(よろこび)に入ろうではないか
第一の者も第二の者も、報酬を受け取りなさい
富める者も貧しい者も、共に祝いなさい
節制した者も怠けた者も、この日を喜びなさい
斎した者も斎しなかった者も、さあ、いま楽しみなさい
この宴(うたげ)は溢れこぼれんばかりに豊かだ
さあみんな、飽きるほど食べなさい 子牛はまるまる肥えているではないか
この宴から空腹で帰ってゆく者が、一人でもいてはいけない
さあみんな、この信仰の宴を楽しみなさい
この慈しみの富をうけなさい
誰も、もう、貧しさを憂いてはいけない
王国が打ち立てられ、すべての人々が招かれているのだから
誰も、もう、罪のために泣いてはいけない
主の墓から赦しが輝き出たのだから
誰も、もう、死を恐れてはならない
救世主(ハリストス)の死が私たちを解放したのだから
彼(ハリストス)は、死に包囲されたが、逆に死を討ち滅ぼした
彼は、地獄に降って、地獄をとりこにした
彼は、そのお体に触れた地獄を悔やませた 預言者イサイヤが言った通りだ
「地獄はあなたを組み敷いてしまってから、悔いて悲しんだ」と
地獄は悲しんだ。そこが空っぽになってしまったから
地獄は悲しんだ。恥をかかされてしまったから
地獄は悲しんだ。葬り去られてしまったから
地獄は悲しんだ。打ち倒されてしまったから
地獄は悲しんだ。縛られてしまったから
地獄は主の肉体を受け取って、神に向かい合う羽目になってしまった
地獄は地上に生きた者(ハリストス)を受け取って、天国に出くわしてしまった
地獄は目に見える肉体を受け取って、見えざる者の力に圧倒されてしまった
死よ、おまえの刺(はり)はどこにいってしまったのか?
地獄よ、おまえの勝利はどこへいってしまったのか?
ハリストス復活して、おまえは失墜した
ハリストス復活して、悪魔は倒された
ハリストス復活して、天使らは歓喜する
ハリストス復活して、「いのち」は凱旋する
ハリストス復活して、墓の中にはもう死者はいない
ハリストスが死より復活して、死者たちの復活の初穂となったから!
光栄及び権柄は、世世に主に帰す アミン。
(名古屋ハリストス正教会司祭、松島神父訳)
ハリストス我が神の至栄なる復活の光明の日の説教
誰れか敬虔にして神を愛する者ならば、斯の美わしき光明なる祭りを楽しむべし。
誰れか善智の僕ならば、喜びて其の主の歓楽に入るべし。誰れか斎して労せしならば、今銀一枚を取るべし。
誰れか第一時より工作せしならぱ、今日至当なる値を受くべし。
誰れか第三時の後に来たりしならぱ、感謝して祝うべし。
誰れか第六時を過ぎて至りしなば、いささかも思い煩うべからず、蓋し毫も失う所なし。
誰れか第九時に迄遅なわりしならば、少しも疑わずして就くべし。
誰れか唯第十一時にのみ至りしならば、其の遅なわりたるを畏るべからず、蓋し主宰は寛大にして、末の者を第一の者の如くに接け、第十一時に来たりし者を第一時より工作せし者の如くに息わしむ。
後の者をも恤れみ、先の者をも慮る、彼にも与え、此れにも賜う。行いをも受け、志をも嘉みす。功をも敬い、望をも賞む。
故に皆我が主の歓楽に入れ、第一の者も第二の者も報賞を受けよ。富める者及び貧しき者は相共に祝え。節制の者及び怠惰の者は日を尊べ。斎せし者及び斎せざりし者は今日楽しめ。筵は豊盛なり、皆食いて飽くべし。犢は肥大なり、一人も飢えて出づべからず。皆信の筵を楽しめ、皆慈愛の富を享けよ。
何 人も貧窮を憂うべからず、蓋し公共の国は現れたり。何人も罪の為に泣くべからず、蓋し墓より赦免は輝けり。
何人も死を畏るべからず、蓋し救世主の死は我等を釈きたり。彼は此れに囲まれて之れを滅せり。彼は地獄に降りて地獄を虜にせり。彼は其の肉体に捫りし者を悲しませたり。之を預知せしイサイヤも此の事を呼びて言う、地獄は爾を下に迎えて悲しめりと。
悲しめり、蓋し空しくせられたり。
悲しめり、蓋し辱しめられたり。
悲しめり、蓋し殺されたり。
悲しめり、蓋し仆されたり。
悲しめり、蓋し縛られたり。肉身を受けて、神に著けり。地を受けて、天に遇えり。見たる所を取りて、見ざる所に陥れり。死よ、爾の刺は安にか在る、地獄よ、爾の勝は安にか在る。
ハリストス復活して、爾は墜ちたり。ハリストス復活して、悪魔は仆れたり。
ハリストス復活して、天使等は歓ぶ。ハリストス復活して、生命は凱旋す。
ハリストス復活して、死者は一も墓に在らず、蓋しハリストス死より復活して、死せし者の中に初実と為れり。
彼に光栄及び権柄は世々に帰す、「アミン」。